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高槻市の「みらい創生」の取組
「みらい創生」の取組と成果 については、以下のページをご覧ください。
少子高齢化に伴う影響について
将来訪れる「少子高齢化」社会の到来は、社会全体に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。
我が国の人口は、平成20年(2008年)をピークに増加から減少に転じており、15歳から64歳までの生産年齢人口については、それよりも早く平成7年(1995年)に減少に転じています。
その影響としては、少子高齢化により、労働力が減少し、税の負担能力が低下することがあげられます。その一方、高齢化により、社会保障関係経費が増加しますので、その経費をどのように負担していくのかが大きな課題となります。
少子高齢化がもたらすこのような課題に対して、本市に限らずどこの自治体においても、今後も持続可能な行政運営ができるよう、対策を講じていく必要があります。
本市の今後の人口見通し
本市は、昭和40年代に大阪・京都のベッドタウンとして、全国的にもまれに見る人口急増を経験し、昭和40年に13万1千人であった人口は、毎年約2万人ずつ増加して、昭和50年には、33万1千人になり、10年間に、20万人も増加しました。
この時に、小学校23校、中学校9校、幼稚園23園を建設し、今の高槻市の基盤が形作られた重要な時期でありました。
その後本市の人口はほぼ横ばいで推移してきましたが、今後、少子高齢化に伴い、0歳から14歳までの年少人口、15歳から64歳までの生産年齢人口は大きく減少し、約40年後の平成72年には、本市の人口は24万5千人になると見込まれています。これはピークだった平成7年の人口の3分の2になり、高齢化率は、現在の約28%から40%まで上昇すると予測されます。
高槻市の人口推移と今後の見通し
(人)
(高齢化率)
(平成28年2月:高槻市人口ビジョンより)
本市の今後の財政見通し
人口推計に基づく財政への影響(試算)
こうした人口減少は、財政状況にも大きな影響を与えることが想定されています。
具体的には、歳入では、生産年齢人口の減少などにより市税の増加は見込めず、市税収入は、平成37年度には465億円となり、平成28年度と比較して25億円の減少が想定されます。一方、歳出では、高齢化などにより扶助費などの社会保障の関係経費が伸び続け、平成37年度の扶助費は、平成28年度と比較して60億円以上伸びる見通しです。
この赤字については、基金を取り崩して収支の均衡を図っていきますが、年度を追うごとに収支不足が拡大していく予想となっています。
本市は、昭和50年代に財政危機の経験があり、それを大きな教訓として財政状況が良いときでも、将来に備え、常に効率的な行財政運営を心がけ、現在に至るまで健全財政を維持してきました。
こうしたことから、「高槻市の財政状況は悪くない」と感じておられる方も多いのではないかと思いますが、今後起きる少子高齢化などの影響は、これまで本市が積み重ねてきた行財政運営の努力を上回るものであると考えられます。
本市の公共施設について
また、本市のような都市部では、高度経済成長期に人口が急増し、公共施設やインフラを一気に整備することになりました。本市でも、(1)のとおり、昭和43年度からの10年間で総床面積ベースで約45%の公共建築物が建築されています。
(1)建築年度別の床面積
加えて、この時の建築物は、現在おおよそ築40年を超えており、(2)のとおり、築30年以上の公共建築物の割合は、平成34年度には約84%となることになり、今後、人口急増期に整備した施設を更新していく必要があります。
そのため、ハード部門においても、今後、収支合計は赤字になっていく見通しです。
(2)建築経過年数ごとの床面積の割合
みらいのための経営革新宣言
こうした非常に厳しい財政状況が想定される中、本市は、子どもたちに希望ある未来を引き継ぎ、持続可能な行財政運営を構築し、真に必要な市民サービスを確保することを目指し、平成28年1月に「みらいのための経営革新宣言 フューチャープログラムの実行」を発し、「みらい創生」の取組を推進することとしました。
経営革新宣言では、「強い財政をつくる」、「強い組織をつくる」、「輝く未来をつくる」という3つの柱のもと、1つ1つの事務事業について将来の姿を思い描いた上で解決に向けたプログラムを作成し、その解決に向けて着実に実行することで、将来の財政規模に見合ったゼロベースでの見直しや簡素で効率的な執行体制を構築していきます。
みらい創生審議会
平成28年6月には、「経営革新宣言」を具体化するにあたって、経営の専門家や学識経験者など、外部の委員のご意見をいただくために「みらい創生審議会」を設置しました。
その後、審議会での議論をとりまとめる形で、平成28年12月に、「『高槻市みらいのための経営革新』に向けた骨太方針について(以下、「骨太方針」といいます)」が市に答申されました。
そして、骨太答申を受けて市としての方針の策定に着手し、平成29年9月、「『高槻市みらいのための経営革新』に向けた改革方針」(以下、「改革方針」といいます)を策定しました。
基本的な考え方
以下の4点を「みらい創生」の「基本的な考え方」とし、取組を推進するにあたっては、特に留意してまいります。
(1)未来志向の魅力あるまちづくり
厳しい財政状況が見込まれる中にあっても、明るい未来を創生することが必要であり、そのためには医療の充実や健康寿命の延伸に向けた取組、次世代への投資、観光の振興など、魅力あるまちづくりの推進を念頭に入れ、取組を進めます。
縮小均衡の改革に陥らないよう留意し、市民力や民間のノウハウを活かし、市全体に活力が生まれるように、未来志向で改革を進めていきます。
(2)事業自体の必要性、公民の役割の検証
将来を見据え、今後も市が直接実施すべき事業であるかを見極めながら、組織や業務のスリム化を図ります。
- すべての事務事業について、その必要性や有効性を検証し、真に必要な事業の選択と最適化を進めます。
- 「市として担うべき事業」、「市として担うべきであるが、手法として外部化を推進すべき事業」、「民間に任せるべき事業」、「縮小・廃止すべき事業」を検証・分類し、市が主体的に行う事業を明確にします。
(3)生産性の向上
業務の見直しに当たっては、業務の量だけに着目するだけでなく、業務の質も高まるよう留意し、生産性の向上に取り組みます。
- 市が実施する業務については、より一層の効率化を図り、生産性を向上させる余地がないか検討を行います。
- 職員がやりがいを持てる人事制度の構築など、組織の活性化につながる手法の検討を行います。
(4)相対的な世代間バランスの調整
20年、30年後の高槻の姿を思い描き、どの世代にも公平な施策となるよう世代間バランスに配慮を行い、次世代の市民に住みやすいまちとなるよう、取組を進めます。
取組項目
具体的にどのようなことに着手していくのかについては、今後、危機的な財政状況が予想される中、改革を進めることにより、まずは財政面の充実を図ることが、今後のまちづくりの実現のためには最も重要になると考えています。
取組にあたっては、市の歳入を増やし財政を充実させる「歳入改革」、歳出手法の見直しや施設などの有効活用により歳出を抑制する「歳出改革」、市の水道・交通事業や外郭団体の事業を見直す「公営企業・外郭団体改革」の3つの分野に分けて示しています。
1 歳入改革
(1)課税対象の的確な把握と滞納処分の徹底、不納欠損額の縮小
課税対象を的確に把握し、適正な賦課徴収と徴収体制の更なる強化
(2)受益者負担の見直し(手数料・使用料等)
施設等使用料や各種手数料の適正化を図り、減免措置の状況について検証
(3)公有財産活用・処分の推進
不要となった公有財産の積極的な処分(売却)・貸付を推進
(4)新たな財源の創出
- 企業などの誘致を積極的に推進し、産業の活性化を図り、税収等を増加
- 市の資産を有効活用し、歳入確保に向けた手法を拡充
(5)交流人口・定住人口増加に向けた取組の推進
- 地域経済の発展や税収増を実現するため、交流人口や定住人口の増加につながる施策を積極的に推進
- 居住地選択の際に考慮される項目のうち、市として関与できる医療、子育て、教育等の環境向上に積極的に取り組む
2 歳出改革
(1)外部化の推進
事業自体の必要性や公民の役割を検証し、民間がサービスを提供している分野については、事業自体の廃止や民間活用を推進
(2)契約の適正化
一般競争入札の拡大等の検討を進めるとともに、随意契約する場合の妥当性について検証
(3)生産性の向上
業務内容や業務量、配置定数等について十分に検証し、より効率的で簡素な人員体制を構築するとともに、更なる効率化を推進
(4)人件費の抑制
- 業務の効率化を推進することで職員数や時間外勤務の縮減を図るとともに、職員採用については十分に検証
- 人事考課制度を適切に運用し組織を活性化させ、職員の勤務意欲と能力の向上を図ることで、人材育成を一層強化
(5)補助金の適正化
現在の社会情勢に照らし、補助金の補助目的の妥当性や必要性を検証し、適宜見直しを実施
(6)施設等の有効活用(統廃合、多機能・多目的化の推進)
- 今後の維持・更新に係る費用や、将来の人口減少による影響を見据え、今ある施設については、アセットマネジメントの観点から、保有の必要性と適正な施設数について十分に検証
- 今後も必要な施設については、集約化、複合化等の手法を検討し、総合的な施設管理による効率的な運営を目指す
- 施設の老朽化の進行に対しては、劣化状況を適切に把握した上で、ライフサイクルコストを考慮し最適な保全を図る
3 公営企業・外郭団体改革
(1)水道事業の経営について
- 業務量や人員などの生産性について、更なる経営効率化に向けた検討
- 府域一水道に向けて、近隣の水道事業体との広域連携を検討し、より一層の経費縮減を図る
(2)自動車運送事業の経営について
- 安全・安心・快適かつ効率的なバスサービスの提供に向け、更なる経営の強化と人材の育成
- 民間並みの経営効率の実現を目指し、給与水準と生産性・効率性の見直しに取り組むとともに、今後のバス事業の民営化について検討
(3)外郭団体の経営について
利用者サービス向上や経費縮減の観点から、外郭団体のあり方の見直しやその廃止も含めて検討
今後の取組について
具体的な見直しにあたっては、市民の皆様に対して実施している行政サービスに影響を与える可能性もありますので、そうした部分については、特に市民の皆様にご理解とご協力が得られるよう、丁寧な説明に努めながら進めてまいります。
また、まずは市内部の業務の整理を先行して着手することが必要であると考えており、業務を見直すことで生産性を向上させ、人件費を抑制し、市役所業務を効率化させていきたいと考えています。
20年先、30年先のことと聞けば、まだまだ先のようにも感じますが、過ぎてみれば「あっという間だった」と感じる年月でもあります。将来に備え、今から私たちにできることを一つひとつ積み重ねることで、着実に歩みを進めていく必要があると考えています。
子どもたちに輝く未来を引き継ぐために、市民の皆様にも、改革方針の内容をご理解いただき、「みらい創生」の取組にご協力いただきますようお願い申し上げます。