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学校教育監の佐藤です。春の到来とともに、学校では卒業式や修了式、入学式、始業式が行われ、別れと出会いの季節となりました。慣れ親しんだ学校やクラスメイトと別れ、新たな場所で新しい出会いをしている子どもたちの表情を見ると、これからも人を大切にしながら成長されることを願わずにはいられません。学校教育を充実させるための取組を、今後も丁寧に進めていく決意を新たにしているところです。
さて今回は、去る2月4日に高槻現代劇場中ホールで開催しました「教育フォーラム」について、ご報告します。
「教育フォーラム」は、「子どもたちを次代を担う責任ある大人にするために」をテーマに、ともに子どもたちの教育を考える場として、保護者や教育関係者をはじめとする市民の皆様に向けて開催しました。
「教育フォーラム」では、まず高槻の教育について、これまでの取組と、現在行っている教育に関する基本計画について、教育委員会事務局から説明しました。
本市が、平成12年「高槻市教育改革懇話会」の提言を受け、以降「2学期制」「連携型小中一貫教育」等、様々な教育改革を推進してきたこと。そして現在は、教育に関する基本計画である「第2期高槻市教育振興基本計画」に基づき、取組を進めていること。この計画の中で、めざす子どもの姿を「人や社会とつながり、学び続け、よりよい自分と社会を創る子ども」としていることなど、ポイントを絞って説明いたしました。なお、これらについての詳細は下記のページに掲載していますので、お時間がある時にぜひ、ご覧ください。
記念講演では、「知の敬意を置き忘れないために」と題して、JT生命誌研究館の永田和宏館長にご講演いただきました。永田館長は、細胞生物学における第1人者であるほか、歌人として宮中歌会始の選者を務められるなど、幅広くご活躍されています。
講演は、同じく歌人である奥様との出会いや、研究者になる転機など、ご自身の歩みに始まり、教育や研究におけるあるべき姿や、「科学的である」「知る」ということの意味について、幅広くも深みのあるお話をいただきました。
社会の急速な変化は、人間を忙しくさせています。限られた時間で物事をやり遂げていかなければならない大人は、目的を達成するために最小の負荷となるような道を選びがちです。教育においても同じで、子どもたちが学校で学ぶべきことは増え、教師はその1つ1つに目的や意味を持たせて効率的に指導をしようとします。しかし子どもから見れば、学校で学ぶことは「何の役に立つのか、よくわからない知識」です。なぜなら教師の言う目的や意味を実感を持って理解するためには、経験を必要とするからです。子どもたちは学校でそのような知識に多く出会います。そして、自分自身で「知識と知識」、「知識と経験」がつながっていくことの楽しさを発見していきます。これこそが学校教育の価値であると思います。私たち大人は、そのような子どもたちの学びに伴走できているでしょうか。永田先生から「知識が学問につながるためには、驚きと感動が必要」というお話から「学ぶ」ことについて、改めて考える機会となりました。
パネルディスカッションでは、市長をはじめ、教育委員の岡本華世さん、城南中学校長の上田誠一さん、追手門学院大学教授の三川俊樹さんの4名の方にご登壇いただき、「子どもたちを次代を担う責任ある大人にするために」をテーマに議論を交わしていただきました。
まず、次代を担う「大人」とは、どのような大人を思い浮かべるのか、それぞれのお立場からお話しいただきました。「人を信じ、人を大切にできる人」「自分で考えることができる人」「次の世代に向けて恩送りができる人」「他人事を自分事として受け止められる人」など、ご自身の思いや経験を通してお話いただきました。続いて、そのような大人を育てるために、実践していることや大切にしていることについてのお話しいただき、学力をつけること、安心できる環境をつくることなどの学校の取組や、自分自身で考えたり、向き合ったりする大人の姿を見せるなどの家庭における子どもとの関わり、そして子どもと対話することが大切さなど、子どもの成長を温かく見守ろうとする気持ちが伝わる内容でした。最後に、市長から、まちづくり、産業政策等、高槻全体を見ながら、教育を支えるまちの基盤づくりをしなければならないと考えをお話いたしました。
立場は四者四様でしたが、教育への情熱はどの方も変わらず、思いのあふれる議論をいただきました。様々な立場の方から教育について語っていただくことは、大変ありがたいことだと考えています。
教育フォーラムは2時間半という短い時間ではありましたが、教育に対する熱気が感じられる濃密な時間となり、盛会のうちに終わりました。約450人の方にご来場いただきましたが、「教育について、根本的なところを見つめ直す良い機会となった」「市がめざす教育、これからの教育のあり方について考えを深めることができた」「親も子も人生の素晴らしさを自らの手で感じられる問いを常に持ち続けたい」といった、たくさんのお声をいただきました。ご参加いただきました皆様に対しまして、改めて感謝申し上げます。
教育を取り巻く環境は急速に変化し続けています。しかし、このような急速な変化への対応が求められる中であっても、変わることのない“教育の使命”。それは「次代を担うことができる“成熟した市民”“実力ある大人”の育成」です。そして、その基盤となるのは、子どもたちに“確かな学力”をつけることに他なりません。そのために、「第2期高槻市教育振興基本計画」に基づき、子どもたちの学力をつけるべく、様々な施策を展開してまいりますが、その目標を達成するためには、地域や社会の皆様の協力が不可欠です。今後とも、本市の教育に対するご理解とご協力をお願い申し上げます。
佐藤 美恵
令和4年4月1日から現職。高槻市出身。趣味は、読書、アクセサリー作り